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2009年2月27日 (金)

『白い花の舞い散る時間』を読んだ感想

※コバルト文庫『白い花の舞い散る時間』について若干ネタバレしてるかも。

買ってから四年近く積んでいたコバルト文庫『白い花の舞い散る時間』(友桐 夏)をようやく読んだので感想を書いてみる。

序盤のあらすじとしては――
ネット上のチャットだけで関わりを持っていた気心のしれた五人の少女は、一人の提案により初めて実際に会うこととなる。
ただし、それぞれの余計な情報を知ってしまうことでその後チャットで気まずくなることを避けるため、誰が誰であるかわからないように偽名を使って正体は明かさないようにしようというルールが設けられる。
そして少女たちは、人里離れた古い洋館で五日間を共に過ごすことになった。
――という話で始まって最後まで舞台は洋館なので、物語はほとんどこの女子グループのみで進められることになる。
主な登場人物が女子のみとなればどうしても百合的な話を期待してしまうわけで、そのあたりにもちょっとだけ期待しながら読んでいたわけなのだが、結論からいえば、百合小説とは呼びにくいが百合要素はある、といったところ。

序盤の話の軸となる「誰が誰なのか」という謎の最も大きな部分は終盤にたった二行で明かされてしまうため、最終的にはあまり重要でない要素だったように思える。あくまで序盤から中盤にかけての話を面白くするための要素なのかも。
なのでこの作品の話の軸は、登場人物の複雑な生まれと、複雑な家庭環境と、歪んだ姉妹愛……かな?
ただ、少女たちはそれぞれ重たい事情を抱えており、それぞれがそのことに気付いているため、会って事情を話しあって少しでも気を楽にして、そしてそんな事情を知ることによってその後のチャットに悪影響を及ぼさないようにするという目的で偽名ルールが採用されているから「誰が誰なのか」が必要ないとはいえないだろうけど。

ジャンルとしてはミステリーとのことで、ミステリーな本のミステリー部分についてあまりネタバレするのはまずいだろうと思うので、ここでは主に百合についてぐらいしか語らない。正直、複雑な話だったので語れないというのもある。
まあ、ミステリーっていうか30%ぐらいはホラーもしくはサスペンスという印象だったが……。
描写が細かく比喩表現も豊かなので、単純に文は魅力的だった。

さて、全体的に見れば百合要素は少なめのこの作品ではあるが、話の根幹部分には若干百合的な要素が絡んでいるので、一応そのあたりにも注目していたほうが話がわかりやすくなる……かもしれない。
で、その話に関わってくる百合要素だが、今作の主な語り手となる深月(みづき)の、伶沙(れいさ)という人物に対する見方が以下のような書かれ方をしている。

[引用1]

 風を受けて彼女のシャツの裾がまくれあがり、なめらかそうな背中が半分あらわになった。縦に一直線に走ったくぼみが妙になまめかしかった。

[引用2]

 深月は彼女の剥き出しの太腿を見て、同性ながらどぎまぎしていた。

[引用3]

 きれいな腕。しなやかで透明感があって、白磁のマリア像みたいだ。この潔癖そうな手で、彼女はこれまでになにをしてきたんだろ。これからなにをするつもりかしら。

この他にもこの作品は、全編に渡って人物の外見や動作が丁寧に描写されていて充実していることもあってか、深月が伶沙に特別な興味を抱いているということがひしひしと感じられたので(他の人物に対してはこのような見方はされていなかったと記憶している)、これは百合の匂いが……! などと思っていたら、中盤、男性よりも伶沙のような女性に恋をするのかというような質問を深月がされる場面ではきっぱり否定してしまったので、おや? 百合じゃないのか……とそのときは思った。しかし最終的には、たしかに恋愛感情ではないらしいもののそれ以上の特別な気持ちは抱いていたというまさかのヤンデレ。
伶沙に対してだけ妙に色気を出して見ているような……と個人的に気になっていた上記の引用部分などがわりと重要な伏線だったようで、ずいぶん細かい仕掛けを用意しているんだなぁと思った。

もしも伶沙が百合っ娘であったならきっとこの作品はハッピーエンドで終わっていたのだろうけど、惜しむらくは……。
すっきり終わる作品ではないけれど、中盤までの明るいガールズライフや適度な緊張感。それに、気心がしれているはずなのに最初から疑って見ざるを得ない人物たちの特殊で不安定な距離感は全員に裏があることを感じさせて、読み手も疑いながら、これからどうなるのだろうと楽しく読める良い作品だったと思う。

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